連載・特集

2023.3.24 みすず野

 甲子園で女子部員がノッカーを務めた。野球漫画の一こまみたいだが、いずれ当たり前の光景になるだろう。ジェンダーを巡る時代の変化はさておき、彼女のノックを受けられる選手たちの幸福さがうらやましい◆朝日新聞に記事が載っていた。部員数が少ないなか「ノック打てる余裕あるん私だけやな」―毎朝バットを振り続けた。想像していた高校生活と違う。放課後のカフェも、おしゃれをしてのお出掛けも...代わりにあるのは両手のまめと腕の筋肉痛...「誰よりも自分が一番、青春してると思います」―若さがまぶしい◆新生活が始まる春。きっと想像とは違う場面にも出くわすだろう。振り返ると―もしかしたら、あれは"ノック"だったのかも―思い浮かぶ顔が一つ二つ。その時は感謝どころか反発しか覚えなかったけれど。翻って自分は的確なノックを一度でも打ったことがあるか◆捕球の動作を繰り返しながら、グラブに球を、グラウンドの土に体をなじませる。さあ試合だ。どんな強い打球でも飛んで来い!と気力も湧いてくる。ノッカーの自省はさておき、今頃しきりに思う。ノックを受けたい。もう1本お願いします!