2024.10.8 みすず野
プロ野球阪神タイガースの監督人事が注目されている。岡田彰布監督の退任は残念だが、新監督候補に、テレビ中継で専門的な内容をわかりやすく解説している藤川球児さんの名前が挙がり、ファンの期待を集める◆作曲家の武満徹さんは大のトラファンで「阪神タイガースファンだったことも、彼に謎めいた重層性をもたらした」と、当時NHKディレクターで「未来への遺産」など武満さんと制作した吉田直哉さんは『まなこつむれば...』(筑摩書房)に記す◆ある夜、音楽収録が終わった途端「阪神どうなったろう」と大声で尋ねた。大事な一戦で気になっていたらしい。スタッフが巨人の勝ちを伝えると、がっくりと突っ伏した。「気がつくと、小さな声で何か歌っている。耳をすますと『六甲おろし』なのである。まるで黒人霊歌のように胸にひびく『六甲おろし』」◆「あれをもとに一曲のこしておいてくれたら、阪神ファンのみならず、さまざまな挫折からの再起を祈念する人に役立つ、国民的な歌曲が生まれていたのにと思う。実に惜しい」と。武満さんは平成8(1996)年65歳で他界した。その2年後に書かれている。