連載・特集

2024.10.26 みすず野

 きょうは「柿の日」。俳人の正岡子規が明治28(1895)年10月26日からの旅行で、有名な「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」を得たとされることに由来する。全国果樹研究連合会カキ部会が、柿の販売促進を目的に制定した◆柿の句をもう一つ。「青竹が熟柿のどれにでも届く」飯田龍太。『よくわかる俳句歳時記』石寒太編(ナツメ社)に解説が載る。「熟柿」は赤く軟らかくなった渋柿で、渋みが抜けて甘くなり食べられる。それを、先を割った青竹に挟んで枝ごと折って取る様子を捉えている。「秋晴れの空のもと、赤い熟柿とそれを取るための青竹、色彩も鮮やか」とする◆『日本大百科全書』(小学館)には「柿は古くから栽培されてきただけに実用として用いられるほか、民間信仰とかかわる多様な民俗をもっている」と教わる。各地に流布する柿本人麻呂伝説のなかには、人麻呂は柿の木の下に出現した神童で、柿の木の股から生まれたと伝えるものもあるそうだ◆実家の敷地に以前、甘柿と渋柿の木が数本植わっていた。子ども時分に見た背中を丸めて渋柿をむいていた、亡き祖母の姿が懐かしい。干し柿作り名人だった。