安曇野コシヒカリ 待望の新米収穫に手間惜しまず
県内有数の米どころの安曇野市では、収穫が真っ盛り。作況は良好で、うれしい実りの秋となった。農業の担い手育成に取り組む「あかしな農業塾」の明科東川手の田んぼで、コシヒカリの収穫とはぜ掛けを体験した。
「今年もいい米ができた。暑いので体調に気を付けて収穫しよう」。塾長の内川充弘さん(83)の掛け声で、塾生約30人が作業を始めた。
遊休農地を借用し、3区画計25アールで米を育てた。田植えから約4カ月。1メートルほどに実った稲が、黄金色の穂を垂らしていた。
まずはバインダーという機械で、1列ずつ刈っていく。約13株が稲わらで縛った状態の一束となり、進行方向の右側へ次々と飛び出してくる。実際にバインダーで刈ってみた。最初はバランスがとれず左右にふらついたが、慣れてくると楽しい。
今春入塾した女性=安曇野市明科七貴=は「米不足が話題となっているが、米を育て刈ってみると農家さんの苦労が分かる」と汗を流していた。
収穫の次は、はぜ掛けだ。金属製の3本脚の支柱に鉄製パイプや棒状の木を渡し、高さ約1.5メートルのはぜを8列組んだ。
「一束の稲は均等ではなく1対9くらいに割って、交互に掛けていく。その上に、均等に割った束を重ねる」とベテランの塾生が教えてくれた。稲の束を集めて、これをはぜに掛けていくのは、かなりの重労働だった。
最後は雨対策のブルーシートを掛け、2週間天日干しにして脱穀する。米はもみ殻の付いた状態で、塾生たちが安価で買い受ける。
流通米の多くは、乾燥機で水分を減らして出荷する。これに対し、天日干しは無理なく乾燥させ、米が追熟するため、おいしさが違うとも言われる。
佐藤松男さん(75)=同市豊科=は「はぜ掛け米をもみで保管し、精米したてを炊く。これが格別にうまい」と話した。
取材を兼ねて約3時間の作業で、汗びっしょりになった。作り手たちの苦労、米を育んだ安曇野の大地に感謝して、待望の新米をいただこうと思う。