連載・特集

2024.9.29 みすず野

 風立ちぬ/今は秋/今日から私は心の旅人―。思わず、口ずさんだのは40代以上の人だろうか。そう、松田聖子さんがかつて歌ったヒット曲の出だしだ。秋は風と縁のある言葉が多く、歌詞にもよくなじむ◆『雨と風と光の名前』北山建穂著(みらいパブリッシング)から抜き出してみる。中国古代の宇宙観、世界観である「陰陽五行説」で、秋の配色が白であることに由来して、立秋のころの風は「白風」という。秋らしい感じのする風は、雅楽の調べにたとえて「律の風」と呼ぶそうだ。「律」は和琴などの音調や音階を指す。秋風の爽やかな響きは「爽籟」。『広辞苑』にも載る。籟は、風が物に触れて発する音で、爽籟では秋風が草木などに当たり発する音を指す。いずれの言葉もすがすがしい◆逆に、悪いときに使われることも。「秋風が吹く」は手元の辞書によると「秋」を「飽き」にかけて、男女の愛情が冷める意にも用いる。こちらはかなり冷たそうだ。できることなら関わりたくない◆近年は全国的にみると台風のときに、経験のない強さの暴風に警戒が呼び掛けられることも少なくない。泥縄にならない準備が肝要だ。