連載・特集

2024.8.24 みすず野

 「花」「お正月」「荒城の月」。いずれも明治期に作られ、唱歌に親しむ人たちが今も歌う名曲だ。明治12(1879)年8月24日生まれの瀧廉太郎が作曲した◆廉太郎は裕福な家庭に育った。姉たちはバイオリンやアコーディオンといった当時大変珍しい楽器を習っていた。廉太郎少年は、姉たちの練習をまねて楽器が弾けるようになり、家族を驚かせた。廉太郎は15歳で東京音楽学校に入学。その後、才能を開花させた廉太郎は、ドイツに留学するも結核を患って帰国、23歳の若さで亡くなった◆廉太郎と同じ明治生まれの音楽家で、松本ゆかりというと、鈴木鎮一を思い出す方もいるだろう。ご存じの通り音楽を通じた才能教育「スズキ・メソード」の創設者だ◆教育者として名高い鎮一だが、バイオリン奏者としても超一流だと昨年暮れ、鈴木鎮一記念館の等々力由季子副館長の寄稿で教わった。ベルリンに留学していた鎮一は昭和3(1928)年に、日本人で初めて海外において演奏をレコード録音した。その録音はラジオ放送で、ベルリンの街に流れたという。楽都を形成した一偉人の知られざる一面が分かって、興味深かった。