連載・特集

2024.4.13 みすず野

 春の雨。降る時や降り方で名前がいろいろあるようだ。『春夏秋冬を楽しむ くらし歳時記』(成美堂出版)に教わる◆百穀春雨=穀物の芽を出させる穀雨のころに降る雨。春時雨=降ったりやんだりする春のきまぐれな雨。杏花雨=杏の花が咲く、清明の頃に降る雨。菜種梅雨=菜の花の咲く時期に降り続く雨。紅の雨=ツツジやシャクナゲ、桃など紅の花が咲く頃の雨。催花雨=花の咲くのを催促するように降る雨。どの呼び名も、どこか風情が感じられる◆『これは役立つ! 気のきいた言葉の事典』(PHP文庫)にも雨の呼び名が載る。春雨=季節風の変わり目の、局部的な小低気圧に伴う雨で、細くしとしとと降り続く。3、4月に多く降り、恵みの雨とされている。春霖=仲春から晩春にかけてのぐずついた天候。どちらかというと明るい感じのする雨で、ひと雨ごとに緑が増すような印象を持つ。双方の語感にしっとりした潤いを感じるのは先入観からか◆「春雨の一面がよくとらえられて」(『よくわかる俳句歳時記』ナツメ社)いる歌がある。「くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる」正岡子規