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医療の道、原点は故郷・松本 医師・松岡健さんが本出版

故郷松本を訪れ『赤ひげ先生心得帖』を紹介する松岡さん(26日)

 松本市出身の呼吸器内科専門医で医療法人葵会医療統括局長の松岡健さん(77)=千葉県=が『信州松本 赤ひげ先生心得帖』をKKロングセラーズから出版した。国登録有形文化財に指定される旧松岡医院(松本市大手5)で過ごした少年時代が「医療者としての原点になった」との思いを胸に、医師として人として、後進に伝えたい心得をつづった。陽転思考、縁を大切に...。人生を貫く視座にあふれた一冊だ。

 小学1年生の時に両親が離婚し、母の実家の松岡家(旧松岡医院)で暮らし始めて以降を自伝的に執筆。厳しくも情に厚かった祖父・伊三郎医師の家訓を英国生まれのOSCE(オスキー、客観的臨床能力試験)と重ねながらまとめた。「患者の目を見つめながら話すこと」「どんな患者にも聴診を」などコミュニケーションやスキンシップを重んじた教えには今日にも通じる普遍性があるという。
 松本深志高校や東京医科大、防衛医科大、信州大、パリ大など在学・在籍した先々での出会いや出来事も振り返った。ダイバーシティー(多様性)教育の推進や赤字病院の立て直しなど多岐にわたる。「大学が国家試験の予備校化しつつある現状は嘆かわしい」「電子カルテばかりに向き合わず、患者の症状である天与の黙示に傾聴」など実践や経験に基づく言葉をちりばめた。
 執筆の背景には、知識偏重に陥らない、血の通った医療が広く社会の中で継承されるように―との思いがある。「志の原点は松本。信州の赤ひげ先生こと祖父伊三郎のように、患者さん本位の医療人が一人でも増えるように」と話している。
 217ページ、1650円。

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