連載・特集

2024.03.31みすず野

 ちょうど60年前まで運行していた。松本電気鉄道(現アルピコ交通)の浅間線。そう、チンチン電車だ。自動車社会の訪れが廃止の要因だった。昭和39(1964)年3月31日を最後に、大正13(1924)年に始まった営業に幕が下りた◆1車両で走行し、松本駅前からだと、現在のあがたの森通りを東に真っすぐ進み、松本秀峰中等教育学校前を直角に北へ曲がって元町、横田を経て浅間温泉に向かった。運行区間は5・2㌔。松本電気鉄道発行の『曙光 80年のあゆみ』によると、大正15年には車両6台で1日96往復していた。本数の多さに驚く◆とかく懐かしむ存在として語られがちな路面電車だが、それだけにとどめておいていいだろうか。ネットをのぞくと、人と環境に優しい公共交通として「ライトレイルトランジット(LRT)」「スーパートラム」といった名称で、時代に即した新型路面電車を走らせたり、計画を練ったりしているところがあるようだ◆時代の要請で、一度は埋められた松本城のお堀が復元される。路面電車の復活も難題はあるだろうが、全くの夢物語だろうか。どこからか、妙案が出るのを期待したい。

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