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信大病院が経口的ロボット支援手術で 中咽頭がん手術に成功

経口的ロボット支援手術について説明する鬼頭准教授

 信州大学医学部付属病院(松本市旭3)は県内で初めて、手術用ロボット・ダビンチによる咽頭がんの経口的手術(口から細い内視鏡や手術器具を入れて行う手術)を実施した。全国約50施設で行われており、県内では同病院のみ。従来の内視鏡手術と比べて腫瘍を完全摘出できる可能性が高く、化学療法などの追加治療が不要になるといった効果が報告されている。

 手術は4月21日に行われ、日本頭頚部外科学会の定めるトレーニングを受けた、同病院耳鼻咽喉科学教室の鬼頭良輔准教授(47)が執刀した。患者は初期の中咽頭がんの男性(67)で、出血や感染などの合併症を発症することなく順調に回復して、1週間ほどで退院した。
 経口的ロボット支援手術では、従来の内視鏡で2D(平面的)だった視野が3D(立体的)となり、腫瘍を確認したり切除したりする際の操作性が向上した。鬼頭准教授は、患者から少し離れた「コンソール」と呼ばれる操作席でモニターを見ながらロボットアームを操作し、病変部まで15センチほど挿入して手術。アシスタントが患者のそばで補佐した。手術時間は約1時間だった。
 鬼頭准教授によると、同手術は初期の中咽頭がんに適している。子宮頸がんの原因として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)は中咽頭がんも引き起こすことが知られており、近年発症数が激増している。ダビンチを用いた咽喉頭悪性腫瘍の手術は令和4年から保険適用となっており、鬼頭准教授は「適応となる患者さんには積極的に提案していきたい」と話している。