2025.5.24 みすず野
初めて水田に苗を手植えしてみた感想は「感触が気持ちよくて楽しい」だった。筆者の問いかけに小学3年生の女の子が、はにかみながら答えてくれた。松本市内で過日にあった農業体験イベントでのこと。参加した園児と小学生たちは一様に夢中で作業していた◆祖父が農業をなりわいとしていた筆者も、小学生のころは田植えを手伝った。機械を使わず、親戚一同が集まって作業した。肉体労働は大変だったが、冗談の飛び交う田んぼは、にぎやかで楽しかった。「思い出補正」がかかっているかもしれないけれど◆所有していた田んぼは現在、一部は人手に渡り太陽光発電パネルが置かれ、一部は貸して畑になっている。肉体労働を疎み、手間暇を惜しんで30年ほど前に選択した結果だが、昨今の異常な米価高騰に何だかすっきりしないものが胸に去来する。筆者が下した選択ではないが、もし判断を委ねられていたら...。世の中の流れに逆らえていたかどうか◆筆者が小学生のころ田んぼだった一帯は現在、多くが麦畑となった。間もなく穂が黄金に輝く麦秋を迎えるが、国の減反政策は果たして正しかったのかと思わざるを得ない。