連載・特集

2024.2.25 みすず野

 松本ゆかりの作家の故・北杜夫さんの父で、近代短歌を代表する一人の斎藤茂吉(1882~1953)。松本市和田に名前を冠した記念館がある歌人・窪田空穂とも交流があった。もうだいぶ前になるが同記念館で関連の企画展が開かれた折、当時の館長・小松源一郎さんが小紙に寄稿してくださった◆小松さんによると、茂吉と空穂は格別親しくなかった。が、研究や執筆に必要な資料を貸借し合ったり、新著を出すと寄贈したりといった交流が続いていた。茂吉が5歳上の空穂に宛てた書簡は言葉遣いが常に丁重とも記している。一方の空穂も雑誌などで茂吉の作品を取り上げては称賛していたとも。2人は互いを敬っていたのだ◆茂吉は、短歌制作にとどまらず、作家研究や随筆執筆といった幅広い活動をしていた。現役時代は、精神科医として、東京・青山の青山脳病院の院長を務めた。出身地の山形県に記念館がある◆「ただひとつ惜しみて置きし白桃のゆたけきを吾は食ひをはりけり」。小松さんは当時貴重であった白桃への思いを詠んだ茂吉の歌を「日本古来の伝統詩の魅力を私たちに伝えています」と評す。きょう茂吉忌。

連載・特集

もっと見る