連載・特集

2023.12.7みすず野

 コロナ禍が一区切りついて初めての師走を迎えている。年末恒例となっていた忘年会の復活も計画されているだろう。職場で集まっての宴席は、若い人たちに敬遠されているといわれるが、今に始まったことではない。先輩や上司につかまって、なんだかんだと説教される飲み会が嫌でたまらなかった◆詩人の吉原幸子さんは酒の上の伝説をいくつも持っていた。いわく檀一雄宅の犬小屋でほえていた、福島では中2階の寝床からはい出し、階下を見下ろす窓に半分身を乗り出したまま眠ったなど◆その酒豪が若い女性に、酒の飲み方をアドバイスしている(『日本の名随筆・酒』作品社)。人間のつくり出した「たのしむためのもの」を「不必要にこわがらず、みくびらず、使いこなして『たのしむ』ことを覚えれば、それだけ豊かな時間が過ごせるわけです」と◆若いころは酔いを殺して飲む傾向になりやすいが、それは突然酔っぱらう。そうならないために、素直に酔いに身を任せた方がしっかりしていられるしそれがお行儀のいい飲み方だと。そして、こう呼びかける「さあ、それではお説教終り、いのち短しのめよ乙女ら...乾杯!」。