連載・特集

2023.12.1みすず野

 きょうから師走。暖かい日があったとはいえ、冬が始まる。しばらくは、また、寒さをどうしのぐかと考える日々が続く。冬はつらい季節ではあるけれど、ここを通り過ぎないと春はやってこない◆作家の村上春樹さんは30代前半のころ「僕はダッフル・コートというのが好きで、この十三年くらいずっと同じものを着ている」と書いた(『村上朝日堂』若林出版企画)。色はチャコールグレーで、国内の有名ブランド製。当時1万5000円だったという◆同じ色のダッフル・コートを35年ほど前に買った。6万円くらいだった。今も着ている。流行はいろいろ変わっていくが、全く気にしないできたし、これからももちろん着続ける。厚い毛布のような生地だから重いのが難点かもしれない◆高校生のとき初めて買ったダッフル・コートは、今も捨てずにある。ベージュで2万円ほどだったと思う。さすがにあちこちすり切れているが、学生の間はずっと着ていた。一時人気がなくなったのは、村上さんも書いているように、軽くて暖かいダウン・ジャケットの普及が一因だろう。でも、機能性より、重厚だがどこか温かい意匠の魅力が勝る。