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穂高の"小屋付き"火の見やぐら解体へ 別れ惜しみ来月1日に語る会

解体が決まった火の見やぐら

 黒部ダム建設工事の砕石場の監視塔を移築した安曇野市穂高の火の見やぐらが、老朽化のため解体されることになった。中ほどに小屋が併設された、火の見やぐらとしては全国的にも珍しいデザインで、近年は街歩きの見どころの一つにもなっていた。解体を惜しみ、10月1日には地元の穂高町区公民館で、火の見やぐらについて語る催しが開かれる。

 火の見やぐらは昭和42(1967)年、高瀬川左岸にあった砕石場(大町市)の監視塔を移築する形で、旧穂高町の消防団第4分団の詰め所に建設された。当時副分団長だった二木照雄さん(90)によると、鉄工所を営む団員が払い下げられた監視塔を火の見やぐらに再利用することを発案。2分割して運び、団員40人ほどで人力で組み立てたという。
 高さ21メートルと火の見やぐらの中では大きく、小屋の広さは3平方メートルほど。二木さんは「台風の時期は小屋に5、6人が入って交代で警戒した」と振り返る。火の見やぐらを研究する1級建築士の平林勇一さん(70)=朝日村=は「中間に小屋があるのは見たことがない。唯一無二」と評価する。
 一方、火事を知らせる用途で使うことはほぼなくなり、現在は放水ホースを干すために利用するのみだ。市危機管理課によると、年内には解体工事を行い、新たにホース乾燥塔を設置する。歴史的な背景や地元住民の思いを踏まえ、市文化課は写真や図面を残す「記録保存」を行った。
 二木さんは「寂しい気持ちはあるが、維持にもお金がかかる。記録として残してもらえれば」と話している。
 1日の催しは午前10時からで、平林さんの講演のほか、当時の消防団員である二木さんや井口喜文さん(87)らの座談会、現地見学がある。問い合わせは主催のココブラ信州実行委員会事務局(電話0263・84・5021)へ。