政治・経済

高齢者入浴券の在り方熟考 交付率低下で松本市

福祉入浴券を使って公衆浴場を利用する高齢者

 松本市は、70歳以上の高齢者を対象に配布している市内の公衆浴場に1回100円で入浴できる「高齢者福祉入浴券」の昨年度の利用状況をまとめた。70歳以上の5万4066人に対して13・5%の7291人が交付を希望し、10万135枚の利用があった。交付を受けた人は過去5年間で最も少なかったが、1人当たりの利用枚数13・7枚は最も多かった。市は入浴券の配布方法や、在り方などの見直しを検討している。

 福祉入浴券は高齢者1人当たり年間30枚を交付し、交付を受けた人は市内8カ所の普通公衆浴場と、松茸山荘別館(穴沢)、梓水苑(梓川倭)を1回100円で利用できる。各浴場の利用料(440~600円)の差額分は市が支払っている。
 市の70歳以上の高齢者に対する交付率は13・5%で、平成30(2018)年度の18・2%から年々低下し、総利用枚数も30年度の11万7550枚から約1万7000枚減った。
 市は「交付率の低下に加え、浴場がある地区によって交付率に差がある」として、昨年度から見直しに着手している。一部で廃止の話も出たが、市公衆浴場組合からの継続要望を受けて、本年度は継続した。
 市が浴場側に支払っている差額分は年間で3000万円を超える。福祉入浴券が廃止されれば、これまで入浴券を利用して公衆浴場に来ていた高齢者の足が遠のく可能性が高い。
 組合の阿部憲二朗組合長(66)は「人々のつながりの場にもなっている銭湯文化を守る役目も持っている」と話す。福祉入浴券を利用した男性(84)は「長年利用している。年間の交付枚数をもっと増やしてほしい」と要望する。市高齢福祉課は「高齢者の健康増進と交流促進という当初の目的を達成するため、あらゆる選択肢を検討していく」と話している。

連載・特集

もっと見る