連載・特集

2023.7.29みすず野

 これだけ暑い日が続くと、健康な人でも食欲が落ちる。ほとんど経験のないような高温に、一日の終わりにはぐったりしてしまう。バランスのとれた食事で、真夏の日々を乗り切りたい◆「さっぱりとして滋養にいい」料理として、俳人の大石悦子さんは、新鮮な魚を刺し身より薄めにつくり、氷水をくぐらせて身を締めたあらいをあげる(『旬の菜時記』朝日新書)。その代表的な魚は、海ならスズキ、タイ、ボラ、川ならコイ、フナ。スズキは夏が旬の魚だ◆以前、松本市内で昼食に入った店で、日替わりランチのスズキのソテーを頼んだ。料理を運んできた女性は「コバヤシの...」と言いかけ、慌てて「あ、スズキです」と言い直し、笑いながらテーブルに置いていった。一瞬、間を置いて、こちらも笑ってしまった。昼食のひとときが思わず楽しくなった◆こんな言い間違いを聞いたのは初めてで、何度思い出してもおかしい。勘定のとき「コバヤシのランチね」と言って支払い、もう一度笑った。もしかして客の顔ぶれを見ながら、時々言っているのかなと思ったがそんなことはないな。こんな店での食事は、暑さを忘れさせてくれる。

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