2025.5.26 みすず野
日本人の「和食を中心とする食事形態」は、江戸時代に定着して形作られたと、農学者の小泉武夫さんはいう。江戸期には『豆腐百珍』『料理物語』『江戸料理集』など多くの料理書が出た。冒頭に「食べる人の体や心の状態に合わせて、料理の献立や味つけに配慮せよ」と、料理の基本的な心構えを述べている本が多いそうだ(『江戸の健康食』中公文庫)◆それは食べ物は医者、食べ物は薬という「医食同源」「薬食同源」の考え方が料理に浸透していたということで「食事学上、大いに注目される」と。さらに、飲食と健康に関わることわざが多数出てくることに興味をそそられるとも◆その一つ「三里四方の野菜を使え」は、遠くから運ばれてきた野菜は鮮度が落ち、栄養成分も変化しているから食べてはいけない。三里(12キロ)四方以内のものを使うべきという意味。現代の「地産地消」と全く同じ考え方だと◆「江戸時代は食材や料理法、加工法に知恵をしぼって、それを食べて病気を防ぎ、健康を維持し、そして長寿をめざしたのだ」と説く。もちろん地元の野菜を買う。野菜の種や苗も。ごくわずかな収穫でも味わいがある。