2023.6.20みすず野
6月は2人の音楽家の命日―箏曲の宮城道雄25日と、作曲の滝廉太郎29日―が巡ってくる。目が不自由な宮城は走行中の汽車から誤って転落し、運ばれた病院で亡くなる。享年62。滝は留学先のドイツで病に倒れ、帰国後に看病の効なく23年10カ月の生涯を閉じた◆駅で電車の発車や接近の際に流される音楽を「駅メロ」といい、嚆矢は大分県・豊後竹田駅の「荒城の月」らしい。滝が高等小学校時代を過ごした地である。昭和31(1956)年よりも前には流れていた。なぜ分かるかというと◆宮城の事故はその年に起きた。親しかった内田百閒はかつて竹田で耳にしたメロディーを思い出し、遭難の地そばの愛知県・刈谷駅で宮城が奏でる曲を流せないかと考えた。国鉄の許可を取らねばならない。構想を週刊誌か何かに書いたところ〈すらすらと〉実現の運びとなる。ホームの人々の頭上に琴の調べが降り注いだ◆いつまで流れていたかや、竹田の今は調べていない。楽都の松本にも駅メロがあればいい―と思ったが、あの郷愁を帯びた「まつもと~」の構内アナウンスもあるし、音楽まで流したら、きっとやかましくて困るのだろう。