連載・特集

2023.5.24みすず野

 小社が催すウオーキングイベントに便乗し、中山道の宮ノ越~原野を歩いた。電車の時刻に間に合うよう家を出る。松本城のそばを通りがかると、20人ほどが集団でラジオ体操をしていた◆随筆家の岩本素白(1883~1961)は空襲で家財を失い、姨捨山を望む屋代町(現・千曲市)に逃れた。郷土の歌人・窪田空穂と早稲田で同級、同僚として終生友情を交わしたことでも知られる。よく歩く。名勝旧跡よりも〈何の奇もない〉土地でつえを引き、名文をつづった◆なるほど歩くと(ガイドの名調子にも助けられて)さまざまに発見がある。かつて木曽に5年余り住み、車でなら何度も通った道なのに―宿場町の面影を残す家の造りも、初夏の日差しを照り返すホオノキの大きな葉も―新鮮に映った。驚いたことがもう一つ。先輩がほとんどの一行の中でバテているのは当方1人なのだ!◆こうした催しに参加するため、日頃から鍛えて―アルプスの稜線に立つのが励みとの声も聞いた―おられるという。素白先生に文では及ばなくても、せめて外に出掛ける習慣だけでも倣いたい。まずはラジオ体操を始めなければならないだろう。

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