連載・特集

2023.4.28みすず野

 五木寛之さんは昼型人間に〈変身〉した。深夜営業の店で過ごしたり執筆したり―朝寝て夕方起きる生活を続けていたが、街の灯が消えてしまう。コロナ禍は作家の50年来の習慣を一変させた。〈万年筆はたそがれに動きだす〉◆『生き抜くヒント』(新潮新書)は発行が2年半前だから、あれは感染流行の始まりに過ぎなかったのだと振り返る。この間に「新しい生活様式」から不要不急や外出自粛、ウィズ・コロナを経て「個人の判断」まで、さまざまな言葉が私たちの暮らしに降りかかった◆連休明けに「5類」への移行で新たな段階を迎える。手指消毒を継続の一方で、マスクは任意に―松本地方の動きを伝える紙面に「手探り」とあった。先のことは分からないけれど、ようやく手探りができるようになると捉えて、引き続き予防に努めたい。具合が悪くなったときの対応を確認しておこうと思った◆五木さんは夜型に戻っただろうか。同郷の先輩という勝手な親近感で折に触れ、励まされてきた。師いわく〈この世にたった一人しかいない自分を信じて〉と。元気とはいえ90歳。むちゃをなさらなければいいが...と心配している。