松本市立病院 産科在り方関心寄せて 中村院長 分娩中止検討で呼び掛け

産婦人科の診療機能の見直しを検討している松本市立病院(波田)の中村雅彦院長がこのほど、市民タイムスの取材に応じた。分娩(お産)の取り扱いを中止する議論について「分娩は昭和30年代から続く市立病院の宝で、できるだけ続けたいと思うが、病院の努力だけでは(継続は)難しいのが実情」と現状を語った。将来的に産科医師の確保が困難になる状況を踏まえ、「松本医療圏全体を見据えながら、市立病院の産科の在り方を検討していく」と述べた。
市立病院の産婦人科は現在、40代と70代の各1人と、50代の3人の計5人の医師が診療などに当たっている。医師の年齢が上がる中、中村院長は「あと7、8年は産科診療は続けられるが、定年などで辞めた医師の後任の確保が厳しい」とする。産科医師の不足は全国的な課題で、令和8年開業を予定する新市立病院で産科を続けた場合、「開業から数年で分娩を行えなくなる可能性もある」という。
松本医療圏の出生数は平成27(2015)年度は3463人だったが、少子化が進むとともに減少が続き、令和2年度は2812人と3000人台を割り込んだ。市立病院の分娩件数は、新型コロナウイルス診療の影響を受けたり、近隣に民間の産科医院が開業したりしたことで急減し、令和3年度は173件とピーク時の3分の1まで減った。
中村院長は「病院内のアメニティの改善や産婦人科病棟の個室化を図ってきたが分娩数減少が続き、診療機能を見直すことにつながった」と経緯を話した。その上で「(分娩中止の)結論ありきではない。病院だけでなく周辺の医療機関や市民など、多くの人に当事者意識を持ってもらい、この問題の解決に当たりたい」と話していた。