2024.12.5 みすず野
今年最も忙しかった歴史上の人物は、紫式部だろうか。毎週日曜日夜、その生涯を描かれて休む暇もなかっただろう。『源氏物語』に登場する菓子には、米、麦、豆などの粉を餅にし、ゆでて竹筒に入れ固めた唐菓子の粉熟、亥の子餅、椿餅があるという(『和菓子を愛した人たち』虎屋文庫、山川出版社)◆椿餅は革製の鞠を蹴り上げる蹴鞠のあとの食事の場面に出てくる。椿の葉で餅を挟んだもので、蹴鞠の際に用意される定番の菓子だった。砂糖は高価な輸入品だったので、ツタの樹液を煮詰めたものが使われたそうだ◆椿を用いたのは、古来、厄よけに使われたことと関係があるのかもしれないとも。「軽くスポーツをして汗をかいたあと、一息ついて」おやつ感覚で味わっているのだろうかといい「若者たちの談笑が聞こえてくるよう」だと◆蹴鞠は保存会などで催されているが、椿餅を用意することはないそうだ。和菓子店では2月頃の季節の生菓子として作るところもあるという。蹴鞠のシーンを見る度に思うのは、蹴鞠仲間に入っていても上手ではない人もいたはず。何度もミスをした後で食べる椿餅は苦かったのだろうかと。