県野菜花き試験場の象徴 高床式倉庫今も現役 築70年以上 試験場の歴史示す

塩尻市宗賀の県野菜花き試験場に、創立当初からある高床式倉庫が立つ。広丘高出の市中央スポーツ公園の一帯にあった移転前の施設から、宗賀の現在地に移転した際に移築された試験場のシンボルで、少なくとも70年以上の歴史がある。高床式であることから、職員には「正倉院」の俗称で呼ばれ、現在も現役生活を続けている。
飼料用トウモロコシを、皮を剥いだ「穂」の状態で乾燥・貯蔵する乾燥舎として設けられた。長手方向が約8・8メートル、短手方向が約3・3メートルの木造で、床面は地面から90センチほど高い。貯蔵用の8室があり、壁面や床面は細長い木材を、隙間を空けて何本も並べる形で内部に風が通るようにしてある。脚部には金属製のネズミ返しが付く。
同試験場は昭和12(1937)年、「県農事試験場桔梗ケ原試験地」として、国策で設けられた。戦後の27年に、施設などが拡充された。高床式倉庫はそのいずれかのタイミングで建てられたようだ。現在地には昭和59年に移転した。
試験場は創立当時、農林省とうもろこし育種試験に当たった。牛や豚、鶏向けの飼料用トウモロコシの品種改良研究は平成23(2011)年で終了したが、高床式倉庫は試験場のルーツを示す存在だ。
畑作部長の三木一嘉さん(60)は昭和62年、当時は中信農業試験場と呼ばれていた試験場に入って以来、職員としての経歴のほとんどをここで過ごしてきた。移転当時のことは知らないが、高床式倉庫の移築について「おそらく、モニュメントとして持ってきたのではないか」と想像する。普段は場内の風景に溶け込み、存在を意識することはないが「あらためて調べると、すごいものだなと思う」と話している。