連載・特集

2023.12.16 みすず野

 中心市街地に20カ所も公共井戸があるのは全国的にも珍しいという。井戸や湧水について全国規模で調査研究していて『井戸端からはじまる地域再生』の著書がある法政大学の野田岳仁准教授(42)が話してくれた。「これは松本市の宝」とも◆野田さんは著書で松本市の公共井戸は▽市民の水くみ場や憩いの場▽災害時の生活用水▽観光資源│の三つの役割があると述べる。観光について掘り下げて執筆してある部分では地域の湧水や井戸を探訪する観光はアクアツーリズムと呼ばれ「松本市は行政主導型のアクアツーリズム先進地といえます」と評価する◆好みはあるだろうが松本市の代表的な井戸というと、江戸時代の観光ガイドブック的存在の『善光寺道名所図会』に載る源智の井戸(中央3)が思い浮かぶ。図会で「清泉が湧き出して当国第一の名水だ」と紹介され、長い歳月にわたり市民らに親しまれていることが分かる◆野田さんは井戸利用の課題として、維持管理の継続性を挙げる。地域住民に頼りきりでは限界がある、と。井戸利用の事業を褒められた松本市政にあって、これを衰退させないのが腕の見せどころとなろう。