地域の話題

チロル25日閉店 安曇野の里カフェギャラリー 芸術文化発信9年

作家らが岡本代表(右)をねぎらい歓談したチロルサロンの最終回

 安曇野市の複合施設「安曇野の里」(豊科南穂高)にあるカフェギャラリー「あづみのコミューンチロル」が25日、閉店する。平成26(2014)年6月に市民有志の発起でオープンし、安曇野の魅力発信や文化交流の促進へ役割を担った。閉店は市施設の指定管理者・豊科開発公社の方針。

 開設9年間で、100本に上る展示企画を催し、地元内外のものづくり作家や画家ら芸術家の創作活動を発表した。地元演奏家らが出演するコンサートも200回以上開催し、地場食材にこだわったランチや喫茶の提供にも力を入れた。
 安曇野の工房やギャラリーを一斉公開する秋の恒例イベントとなった「安曇野スタイル」を立ち上げるなど、文化活動に実績がある公社職員、岡本由紀子さん(53)が当時有志として開設に力を注ぎ、代表を一貫して務めた。
 29年に始まった作家間交流会「チロルサロン」の最終回がこのほど開かれ、集まった約30人が閉店を惜しんだ。安曇野市明科中川手のサンドアーティスト・石田恵美さん(47)は「故郷に根差した活動を展開する上でなくてはならない存在だった」と残念がった。池田町会染の陶芸家・篠田明子さん(60)は「ギャラリーごとに顧客層がある。幅広い出会いと創作意欲をもたらしてくれた」と感謝した。店のスタッフだった経験もある常連客の島田尚子さん(54)=豊科高家=は「岡本さんが作り上げた空間に温かな交流がたくさん生まれた」とねぎらった。
 毎月発行した小冊子『あづみのチロルだより』も最終号を迎えた。作家やファンら48人が寄せたメッセージが載る。岡本さんは「多くの方の支えがあったと今あらためて実感する。感謝の思いしかない」と話している。
 同公社は「早くとも11月以降、イベント会場として当面の後続利用を図りたい」考え。市観光課は「(郷土文化の伝承などを掲げる)施設の設置目的に沿い有効活用を」と要望する。