松本平の御柱を丹念に記録 里山辺出身の太田真理さんが研究書出版

松本市里山辺出身の文学博士で、清泉女子大学(東京都)と東京未来大学(同)の講師を務める太田真理さん(61)=横浜市=がこのほど、松本地方の御柱行事をまとめた研究書『松本平の御柱祭』を鳥影社(東京都)から出版した。諏訪大社の各御柱大祭から1年遅れとなる松本市と塩尻市、上伊那郡辰野町の計9社の御柱行事を丹念に調査・記録し、故郷の伝統行事の多様性や独自性を浮き彫りにしている。
四六判224ページで、塩尻市の小野神社と辰野町の矢彦神社、松本市島立の沙田神社、松本市の里山辺林と神田の境にある千鹿頭神社、松本市入山辺の大和合、宮原、橋倉諏訪の3神社、松本市里山辺の須々岐水神社の御柱を取り上げている。
平成23(2011)年に須々岐水神社で、23年に他8神社で一連の祭礼・行事を現地調査し、それらの様式や役割、手順などを克明に記録した。
古代文学が専門の太田さんが注目するのは、多彩な節回しで歌われる木遣り歌の「詞章(歌詞、文句)」だ。御柱として伐採されたスギの大木の出自や由来を歌う木遣りは、「万葉集」で宮殿の造営を祝福する歌にも通じ、長い歴史と伝統を感じさせる。
太田さんは、かつて知人と諏訪地方の御柱行事を見学した際、「松本地方にも御柱があるよ」と紹介しながらもうまく説明できなかった。その悔しさが研究の原点にあるという。調査する中で地元の懐かしい人たちとも再会し、ふるさととの強い絆を実感した。
今年も各神社の御柱行事を調査している。太田さんは、松本平の御柱行事の魅力を「まさに『オラホの御柱』で多様性があり、住民たちが大事に守っている点」と語り「違いを受け入れた上で"自分らしさ"に誇りを持ってもらえれば」と願う。
税込み1980円。詳しくは松本地方の各書店か鳥影社へ。