2025.4.14 みすず野
時間だけは有り余るほどあった学生の頃のように、好きな本を毎日読みふけるわけにはいかない。読みたい本はいくらでもあるからそれをどう読み進めるか、毎日あれこれ迷う。読書のガイドブックのようなものもあるが、ほとんど買ったことがない。ただ1冊、2年前に発刊された『村田喜代子の本よみ講座』(中央公論新社)は、何度も読み返している◆国内の代表的な文学賞をいくつも受賞している作家の村田さんが、福岡県で50人ほどを募って開いている講座を収録した。取り上げている本はさまざまなジャンルの13冊。自著も2冊ある◆「今、書店の店頭に出ている本は地球の石炭層の上っ面に生えた草みたいなものです。読みたい本はじつは過去に出た本の中にザクザクある。新しい本ばかり追ってないで、古い本の地層を掻き混ぜて探すといいと思う」と語る◆書店は常緑樹と落葉樹の混合林のようだといい、同書で紹介した「一種まとまりのない本たちを愛する」。「分厚い書物の本棚より、重なり合い、挟まれ合って、押し合いへし合い乱雑に積まれた本棚が、私の愛すべき雑木林」と結ぶ。同様の本棚を毎日背にしている。