連載・特集

2023.4.21 みすず野

 田んぼに水が入り始めた。街路樹ハナミズキのピンク色の花が残雪の常念岳に映える。一面に白く染まる三郷のリンゴ畑で、農家の人が花摘み作業に追われていた。「連休の頃になっても咲かなかった年もあるのにね」―やはり春はいつもより10日以上早いようだ◆6年前に亡くなった気象エッセイスト倉嶋厚さんの『人生気象学』(東京堂出版)に時季の言葉を教わる。〈春もみじ〉―八海山で仰いだ御嶽を思い出す。〈晩霞〉は夕焼けをいい「♪山のお寺の鐘が鳴る~」と口ずさむ。〈春の雲〉は〈雲ふたつ合はむとしてまた遠く分かれて消えぬ春の青ぞら〉牧水◆先週末の雨は、しとしとと黄砂も洗い流す恵みの雨だった。穀雨のきのうは一転、松本で最高気温が29.4度まで上がり、暑かった。車のエアコン切り替えを冷から暖へ、再び冷へ―とジェットコースターのように慌ただしい◆〈爽やか〉は秋の季語だというが、俳句の人に叱られても「爽やか」と書きたい5月が近い。〈別れ霜〉とされる〈八十八夜〉は夏も近づく5月2日だが、信州では11日先の〈九十九夜の泣き霜〉とか。まだ安心できない。体調にも気を付けたい。