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お堀 全エリア浚渫へ 15日着手で7年がかり

本年度に浚渫を実施する内堀の東部分

 松本市は15日、国史跡に指定されている松本城のお堀の堆積物を取り除く浚渫に着手する。令和11年度までの7年間で、内堀、外堀、総堀の約3万平方メートルを浄化する予定で、「史上初」(市文化財課)の大規模な浚渫となる。本年度は内堀の東部分3480平方メートルにたまるアオコやヘドロなどの堆積物を取り除く。

 令和2年度の実証実験に基づき、堀底の遺構を傷めない「水底土砂ポンプ浚渫工法」を採用する。臭気対策のため、堀の水は抜かない。堀の上に5・5メートル四方の台船を浮かべてポンプで泥水を吸い取る。本年度に取り除く堆積物は2262立方メートルで、産業廃棄物として処理する。
 文化財を傷つけないように手を加えるのは深さ1・5メートルまでで、60年分の堆積物に相当する。市文化財課によると、堀の浚渫は江戸時代後期に部分的に実施された記録が残る。昭和43(1968)年から平成25(2013)年にかけて部分的に浚渫をしてきたが、抜本的な解決には至らなかった。
 堆積物は植物プランクトンの大量繁殖で、水深1メートル未満になると光合成が盛んになり、堆積するスピードが速まる。市文化財課の竹内靖長・城郭整備担当課長は「このタイミングで着手しないと、松本城の堀が埋まってしまう」と話す。
 浚渫は毎年度、9月から翌年3月にかけて実施する。本年度から3年間で内堀、8年度から3年間で外堀、11年度に総堀を行う。本年度の事業費は1億4900万円で、7年間の総事業費は約14億円を見込む。
 臥雲義尚市長は5日の定例記者会見で「7年に及ぶ大きな事業だが、お堀を後世に引き継いでいくため、しっかりと事業を進めていく」と述べた。