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ウクライナの若者に戦争が悪影響 こども病院の医師がメンタルヘルス調査

研究結果について話す後藤さん

 安曇野市豊科の県立こども病院の小児科医で、東京大学大学院の研究員でもある後藤隆之介さん(29)が、ロシアの侵攻によってウクライナの青年のメンタルヘルスに悪影響が出ていることを研究で明らかにした。結果をまとめた論文は、米国医師会が25日に発行した、権威ある小児科分野の医学雑誌「JAMA Pediatrics」に掲載された。

 後藤さんは長期化する戦争の中でウクライナの青年たちのメンタルヘルスを守るため、同国やノルウェーの大学教授らと研究グループ「AUDRI(オードリー)」を発足。昨年、ウクライナの15歳以上の高校生約8000人にオンラインでアンケート調査を行った。
 結果を基に主要な精神疾患のスクリーニング(ふるい分け)を行ったところ、32%がうつ病、18%が不安障害、35%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)で陽性となった。特に戦争をより身近で感じた東部の青年たちは、陽性になる可能性がうつ病で1・4倍、不安障害で1・6倍、PTSDで1・4倍に高まる可能性も示された。
 後藤さんは「(メンタルヘルスに悪影響が出ている青年が)思った以上に多い。この結果を基に支援を進めたい」と話す。今回は現状把握のための研究であったとし、「現地は病院が破壊されて物資もない。限られた資源の中でどう介入していくかが大きな課題」と力を込めていた。
 研究はチェルノブイリ・福島医療基金の支援を受けて行った。

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