連載・特集

2023.11.4 みすず野

 「おまえの乾いた唇が/流行りの口紅でまた飾られた」。小紙連載の美術館・博物館の収蔵品紹介「ミュージアムから」で、昔からのロック音楽ファンには懐かしい世良公則&ツイストの「宿無し」の歌い出しから文章が始まった。紹介されているのは、松本市島立の日本浮世絵博物館収蔵の美人画だ。練られた文章の執筆者は、同館学芸員の五味あずささん◆美人画は12月24日まで(11月12日を境に全作品を入れ替え)の企画展「日々のよそおい」で鑑賞できる。粋な文章に誘われ、博物館に足が向いた◆五味さんがスポットを当てていた歌川国貞の作品「懐中鏡を見る美人」の前に立った。芝居小屋の前で、ひいきの7代目市川團十郎の署名入りの扇子を持ちながら、懐中鏡でメークを確認している姿が何とも艶っぽい。ちなみに現在の市川團十郎さんは13代目で、ご存じの通り昨年11月に11代目市川海老蔵さんが襲名した◆展示会の案内役をしてくれた五味さんは、美人画から流行のメークや人気役者の関連グッズの存在が分かることを教えてくれた。美人画の中に詰まっている、そのような情報に気を留める丁寧な鑑賞をお勧めしたい。