サッカーと仕事、両立に誇り 社会人クラブ・アンテロープ塩尻70周年

塩尻市の社会人サッカークラブ・アンテロープ塩尻が今年、前身の長野教員クラブが昭和30(1955)年に発足してから70周年を迎えた。松本山雅FCの前身に10年先だって誕生した県内有数の歴史を持つクラブだ。ただ、現在の選手は仕事も職場もまちまちのため練習は午後9時から1時間、回数も多くて週3回など恵まれた環境にはない。それでも「働いていても高いレベルでプレーしたい」と選手が集い、各県の強豪が競い合う北信越リーグで戦い続けている。
職場ごとのサッカーチームが数多く生まれた昭和30年代に教員のクラブとして始動し、時代と共にさまざまな仕事を持つ人がプレーするようになった。職場や部活の先輩から誘われて加入する選手が多いのは昔から同じで、選手のバトンが脈々と受け継がれたことでクラブの歴史も延びた。スタッフの平川晴都さん(45)は「人や地域とのつながりが一番の財産」と話す。
塩尻市出身、クラブのジュニア、ジュニアユースで育った中野昭彦さん(23)は県外の大学を経て今季、クラブに戻った。「北信越でプレーしたかった」と理由を話す。20年にわたって県リーグに降格することなく戦っている点もクラブが求心力を維持している要因の一つだ。限られた予算で北信越にとどまるのは簡単なことではないが、長くクラブのかじ取りを担ってきた監督の奥田真央さんは「サッカーが好きというだけでは続かない。環境のせいにせず、それぞれの役割を尽くせる選手、スタッフのおかげ」と感謝する。
近年はプロとしては一戦を引いた山雅の元選手が、加入または練習参加することが増え、刺激を与えている。在籍4年目の高崎寛之さん(39)もその一人。選手としてプレーするのは今季で最後と決めている。昨年の最終節で逃した北信越1部昇格に再挑戦するシーズンにもなるため、「自分の経験をすべて伝えたい」と意気込む。