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下水汚泥堆肥化へ前進 県と南安曇農高が報告、来年度農水省に登録へ

下水汚泥を活用した稲作の結果報告会

 安曇野市の県犀川安曇野流域下水道事務所と南安曇農業高校が協力して進める下水汚泥を稲作肥料とする効果検証試験の結果報告会が25日、同事務所で開かれた。県安曇野終末処理場(アクアピア安曇野)の下水汚泥を使って風さやかを育てたところ、化成肥料を用いたほ場より収量が多く、土壌や米の有害な重金属成分などは全て基準値以下となった。同事務所は令和6年度に「汚泥肥料」として農林水産省に肥料登録の手続きを進める考えだ。

 効果検証試験は初年度で、報告会では同校生物工学科微生物活用コース2年生が、下水汚泥、化成肥料、肥料なしの3区画で風さやかを栽培した結果を説明した。同事務所の職員は、下水汚泥を分析したところ肥料取締法に基づく有害成分の許容濃度を全項目で下回ったことなどを報告した。
 今後は、複数年にわたって下水汚泥を用い、重金属などの土壌への蓄積状況を調べる。下水汚泥には植物の生育に重要な窒素成分とりん酸成分が比較的多く含まれる一方でカリウム成分が少ないことから、令和6年度に化成肥料でカリウム成分を補ってコシヒカリの栽培試験を行う。米以外の作物の生育検証にも着手する。
 現状で下水汚泥は産業廃棄物となるが、肥料として活用できれば肥料価格や供給量が海外情勢に大きく影響を受ける中で農家の助けになると期待されている。南安曇農業高校2年生の生徒は「化成肥料より効果があると実感した」と下水汚泥の肥料化に期待していた。