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松本の古民家で交流の場「南涯館」 市の指導で12月に閉館へ

12月に閉館することになった「南涯館」。建物だけでなく、庭もきれいに管理されている

 国の登録有形文化財になっている築166年の古民家を活用し、コンサートや落語会などを10年間開いてきた南涯館(松本市笹賀)が、今月末で閉館することになった。市街化調整区域にあり、市から演芸場としての利用はできないと指導があったためで、所有する大嶋三紀夫さん(71)=松本市笹部2=は「10年間で地域に定着してきたのに残念。文化財として残していくため活用の道を探りたい」と話している。

 市街化調整区域は、無秩序に街が広がらないように市街化を抑制する区域で、建てられる物が制限される。松本市では昭和46(1971)年に定められ、調整区域ではそれ以前に建てられた物についても新たな使い方には制限がある。
 市建築指導課は11月上旬、コンサートや落語会を開いてきた南涯館について、使い道として認められない演芸場だとし、大嶋さんに今までのようには使えないと指導した。
 大嶋さんはこれまで10年間使用してきた経緯もあり、突然の指導に納得できない部分もあったというが「法に反してまでできない」として12月末での閉館を決めた。
 南涯館は、江戸時代の安政4(1857)年に建てられた本棟造りの屋敷。大嶋さんの父の代から誰も住んでいなかったため、平成25(2013)年に地域交流の場として役立てたいと「南涯館」と名付け、主催のコンサートや落語会を開き、貸し出しもしてきた。10年間で延べ約3800人が利用したという。
 大嶋さんは「笹賀にも本棟造りの古民家は幾つもあったが、年々少なくなっていった。次の世代に管理する負担をかけたくない人が多い」と言い、「コミュニティーの場としても再開したいという思いは強い」と話している。