連載・特集

2023.2.11 みすず野

 高知市在住の詩人・林嗣夫さんは、黒潮洗う地元で雪が降ること自体が珍しいのに、元旦に本降りとなった様子を見て、大伴家持の「新しき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事」という歌が、すぐ頭に浮かんだ◆「きょう降るこのめでたい雪のように、いい事がますます降り重なってほしい―。この歌を口ずさみながら、庭に出てしばらく雪の中に立ちつくしたことである」(『詩を巡るノート』土曜美術社出版販売)と記し、万葉集の偉大さ、個々の作品の素晴らしさを思う◆雪なんか珍しくもなく、時々大雪になって、生活に多大な影響を与える地に住む身として、まとまった雪が降ると天をうらむ。通勤距離が長いので、念のため四輪駆動の軽トラで出勤して万全を期す。それでも高速道路や幹線道路が通行止めになるとお手上げだ◆雪かきでへとへとになった方も多いだろう。特に高齢者には深刻だ。できるだけ隣近所で協力して、この白くて重い物を片付けるようにしたい。大らかに構えて、あまりむきにならずに対処するのがいいような気がする。休み休み体を動かし、無理をしないこと。いずれは消えてなくなるものだもの。