地域の話題

『あのとき僕は』が本に 紀行作家・斉藤政喜さん

刷りたての書籍を手に「苦しい思いをしている若い世代に、勇気を与えたい」と話す斉藤さん

 松本市出身の紀行作家・斉藤政喜さん(61)=山梨県北杜市=が市民タイムスに令和2年4月から2年間、計101回連載した書き下ろしエッセー「あのとき僕は」が本になり、しなのき書房(長野市)から出版された。「故郷の人々へ手紙を書くつもりで」つづったといい、読者の反響が大きかった青春時代の回想記は若い世代を励ますメッセージにもなっている。

 題名は『あのとき僕は―シェルパ斉藤の青春記』。連載で書き切れなかったり、新たに思い出したりした逸話を加筆し、修正もして全121話に再編集した。成長の順に「少年時代」や「大学時代」と章を立て、1話ごと見開きに収めた。
 前半は、どの話から読んでも楽しめる。のどかな山村の情景が浮かぶ。打って変わって父親の会社が倒産した「高校3年生の冬」以降の後半は、話の順にたどらないと筋を追えなくなるところが波瀾万丈の半生だ。
 斉藤さんは「全てを失い、背負うものがなくなった時『僕は自由だ。自分で切り開いていける』と思った」と振り返る。「大丈夫、なんとかなる。下を向かず、上を向いていればバックアップしてくれる人がいる」
 紙面連載の最終回に「明日あがたの森公園にいます」と書いたところ、約150人が集まった。その場で斉藤さんは「必ず本にします」と宣言した。「約束を果たせて、宿題をやり終えた気持ち。世代や地域を超えて伝わる部分もあると信じている」と話す。
 木曽町出身の俳優・田中要次さんが帯書きに推薦文を寄せてくれた。四六判263ページ。1500円(税別)。