連載・特集

2023.1.15 みすず野

 冬の日曜は、自由になる時間が多い。わずかな田畑を耕す作業から解放されるからだ。さて、何をしようかと考えているうちが楽しいので、当日になるとあっという間に過ぎてしまう◆昭和天皇の侍従長を務めた入江相政は、歌人、随筆家としても知られた。日曜は朝から墨をすって書画に励む。午後は随筆を書く。文章は生き物。この言葉はいらない、これもいらないと削る◆「削って、削って、最後の最後に残ったもの、それがいいにきまっているが、あんまりやると、約束の分量に足らなくなってしまう。こんがらがってきた。この辺で一ぺん筆をおこう」(『味のぐるり』中公文庫)。そして日本酒を冷やでやりはじめる。「削ろうが加えようが、気楽なもの。もともと自分の文章だもの。日曜これ好日」◆引用が下手で、肝心の部分を落としているかもしれないが、一字一句が生きている。わずか2ページの「日曜これ好日」という一編。日曜に文章を書くことはないしまして書画とは縁がない。それでももちろん、日曜の楽しさは同じように実感している。もうひとつ、筆をおくまでもなく、酒を楽しむのも。暗くなるのが待ち遠しい。

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