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松本の明治期建築・旧新家医院 コミュニティー施設に再生へ

城町文庫2号店として活用されることになった旧新家医院。松本市役所東庁舎の南に立つ

 松本市役所に隣接して立ち、市近代遺産にも登録される築約110年余の旧新家医院(旧新家眼科、同市丸の内)が、民間活用によって生まれ変わることになった。国宝松本城と開智小学校を結ぶ市道沿いでコミュニティー施設「信州松本城町文庫(開智店)」を運営する市民有志が、同文庫の2号店(丸の内店)として構想。近代建築の取り壊しが市内で相次ぐ中「街の歴史を伝え、魅力ある景観にも寄与する建物を守りたい」との思いを形にする。

 木造2階建て・しっくい壁の擬洋風建築で明治40(1907)年頃の建築とされる。昭和34(1959)年築の市役所本庁舎、44年築の同東庁舎よりも半世紀以上長く、松本城の"お膝元"で歴史を重ねてきた。市役所建て替えに伴う更地化も懸念されたが、市が進める新庁舎スリム化の検討を背景に所有者が外壁を修繕。昨秋に城町文庫の藤木大介さん(40)=松本市蟻ケ崎2=が物件活用に名乗りを上げ、屋内の改修や耐震化を進めている。
 2月下旬にも城町文庫丸の内店としてオープンする予定だ。かつて診察室や待合室だった館内を区画別に貸し出す「小さな複合店舗」をうたい、開智店と同様、市民や観光客が憩えるセルフのカフェスペースや物販・展示用の低額レンタルスペースも設ける。館内からは松本城天守を望むこともでき、土地や建物の良さが再認識されることを期待する。
 普段は行政書士として働く藤木さん。地域に根付く近代建築が年々失われていく現状を憂い「いい建物を守っていく仕組みをつくりたい」と本業の傍ら動き始めた。丸の内店は「労働力のシェア」も試行。軌道に乗れば市内の他の物件にも運用方法を応用・展開していきたい考えで「理解や共感が広がれば」と話している。
 信州物産品販売「信州ギフトデリバリー」が出店を予定する。共同出店の希望や問い合わせは城町文庫ホームページへ。