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クラシック音楽専門店 松本市のクレモナが閉店へ

店主の金森さん。クラシック音楽の知識が深く、優しい人柄が常連客に慕われている

 クラシック音楽のCD・レコードを扱う専門店として、松本市のあがたの森通りで営業している「クラシックディスク専門店クレモナ」(中央3)が3月31日に閉店する。店舗が入る建物が老朽化して契約を更新できないことに加え、レコード業界が斜陽産業になったことが主な理由だ。クラシックに限定したレコード店は全国的に珍しく、音楽が盛んな「楽都・松本」ならではの個人店として長年親しまれてきただけに惜しむ声がある。 

 店主の金森岳さん(72)=松本市県1=が昭和52(1977)年に同市大手2の今町で創業した。店名はバイオリン製造で有名なイタリアの都市から名付けた。定休日は水曜日のみで、金森さんは「決してもうかる仕事ではなかったが、好きだからこそ続けることができた」と45年の歩みを振り返る。
 平成7(1995)年ころに現在地へ移転した。約30平方㍍のスペースに多い時で7000~8000枚のCDが並んだ。室内には来客をもてなす小さな椅子とテーブルが置かれ、金森さんとの会話を目当てに訪れる客も多い。購入額10%の割引券や、CDのクリアカバーを付ける良心的なサービスも好評だ。
 店の歴史はレコード業界の盛衰史と重なる。創業当初はレコードを扱っていたが、1980年代初頭から主力はCDに。初期のCD販売価格は1枚3500~4500円と高単価で、景気の良い時代もあった。2000年代初頭まで好調だったCDの売れ行きはインターネットの普及で下降線に転じ、クレモナを訪れる人も減った。
 それでも常連客は100人ほどおり、金森さんは「ほとんどが中高年の男性」と笑う。長年の感謝を込め、1月から3月末まで店頭の在庫を半額にするセールを実施している。金森さんは「続けてほしいという声もあるが、45年を一区切りにしたい。半世紀近くの営業でクラシックを愛する多くの人と出会い、親しくなれたことが一番の財産」と話していた。

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