連載・特集

2024.4.28みすず野

 名だたる小説家たちが称賛した長編時代小説『大菩薩峠』の著者として名高い。明治から昭和初期にかけて活躍した中里介山のきょうは命日。ゆかりの文学碑が、松本市安曇の白骨温泉に立つ。碑に「白骨の地にゆかり深き/中里介山先生作/小説大菩薩峠記念碑/白井喬二書」と陰刻されている◆『大菩薩峠』は、幕末を舞台とし、主人公の甲州大菩薩峠に始まる旅の遍歴と周囲の人々の生き方が描かれる。連載紙(誌)を替えつつ足かけ約30年にわたり書き継がれたが、中里の死によって未完に終わった◆碑の台石に御影石がはめ込まれ「上求菩提/下化衆生/介山居士題」と刻まれている。どういう意味か。『乗鞍岳麓湯の里白骨(白船)』(横山篤美著、昭和56=1981=年・信州の旅社発行)に説明が載る。菩薩というものは、自分自身、上に向かって悟り(菩提)に至ることを求め、下に向かってはいまだ修行の浅い一般の人々(衆生)を教え導き、そのようにして仏としての悟りを得ようとする心を発するものである│。介山の理念とされる◆今はゴールデンウイーク。天下の秘湯に漬かりがてら、碑を見に行ってはいかが。

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