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生涯通じ描いた田園風景 松本出身の洋画家・柳沢健さん 朝日で企画展

柳沢さんが描き続けた田園風景の絵と鑑賞する長男の一実さん

 松本市里山辺で生まれ育ち、ふるさとの風景を描き続けた洋画家・柳沢健さん(1926~2021)の画業を振り返る企画展「美に求めるもの―柳沢健とその時代」が26日まで、朝日村の朝日美術館で開かれている。初期~晩年の油彩画約60点、絵の勉強で長年収集した美術作品や美術書、画集を紹介している。里山辺の自宅アトリエには300点を超える作品が残り、柳沢さんの家族はアトリエの絵を希望者へ贈呈する意向だ。

 生涯を通じて描いた田園風景は田植え、秋の実りなど季節ごとの表情を豊かに表現している。心象風景を描いたという30代の頃の作品「月夜」、20代の作品など、これまで公開の機会がなかった絵の数々も紹介している。
 農家の長男に生まれた柳沢さんは幼い頃から独学で絵に親しみ、自宅近くから見える田園風景や山並み、農村の四季を描き続けた。20代初めに、疎開を機に浅間温泉にアトリエを構え県の戦後美術を支えた洋画家・関四郎五郎さん(1908~71)に師事。県内美術展への出品を続け、所属する洋画団体・春陽会の審査員や、デザインの仕事などに携わり、戦後復興期から70年以上にわたり郷土美術の発展に貢献した。
 長男の一実さん(68)は「絵が道楽と思われていた時代から身近な風景を描き続けた。いつもアトリエにいて、クラシック音楽のレコードをかけながら描いていた姿を思い出す」としのぶ。アトリエの絵の寄贈にあたり「父の絵が好きな人に飾ってもらえれば父も喜ぶと思う」と思いを語る。
 午前9時~午後5時。月曜休館。