連載・特集

2024.5.9 みすず野

 大型連休最終日、ちょっと早めの夕食を取ろうと、近くのそば店ののれんをくぐった。連休中、どこへも行かず、家の周囲の雑用やわずかばかりの農地を耕した自分への褒美。電話で混み具合を聞くと、そばが残りわずかだというので慌てて家を出た◆店内に客は1組。昼食時ににぎわったのだろう。天ざるにしようと決めていた。天ぷらのお勧めは、春山菜の盛り合わせ。ずいぶんいい値段だなと思ったが、褒美、褒美と繰り返して注文した。タラの芽、ウド、コゴミ、コシアブラなどが皿からはみ出すように盛られてきた◆そばは文句なくうまい。山菜もいい味だが、いささか量が多い。もともと油系に弱いので、最後はちょっと持て余した。なんとか完食。そば湯が胃を落ち着かせてくれた。店を出るまでに2組が来店した◆この店は、地元出身の新聞記者が退職後に設けた。記者当時、毎日書いていたコラムが読者に親しまれたと聞いた。お会いする機会はなかったが、駆け出しの頃、先輩たちから、コラムがどんなに面白かったか聞かされた。夕空が赤く染まり始めた下に建つ店を見ながら願った。大先輩になんとかあやかりたいと。