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豆菓子一筋102年 松本の横山製菓閉店へ

横山製菓の店頭に立つ横山隆行さん(右)と妻の和美さん。閉店を惜しむ客から届いた花を飾っている

 大正11(1922)年に創業し、松本平の豆菓子の製造、販売店として親しまれてきた横山製菓(松本市本庄1)が30日、閉店する。節分の時期には、松本平の小売店に横山製菓の「節分豆」が数多く並び、長年愛されてきた松本の味。惜しまれながら102年の歴史に幕を下ろす。

 社長で製造を担う横山隆行さん(69)が、重い豆を運ぶ作業を40年以上続けたことから腰と膝を痛め、閉店を考え始めた。築87年の工場の老朽化や後継ぎがいないこともあり「元気なうちに」と決断した。
 横山製菓は、隆行さんの祖父・元成さんが豆菓子の製造・卸の会社として創業した。昭和30年代の高度成長期には商品が飛ぶように売れ、従業員10人が働いていたという。隆行さんは25歳で入社し、父の保さんと製造を担った。昭和60(1985)年ころには店を併設、妻の和美さん(66)が接客を担当した。
 「節分豆」は、冬場に食べてもらう菓子として考案した。もともと節分にまく豆は家庭で生の大豆をいっていたが、硬くて味気なかった。横山製菓の節分豆の登場で一変したという。「サクサクした塩味の豆がよかったのかな」と隆行さんは振り返る。
 新しい豆菓子作りにも取り組み、販売した商品は数え切れない。いった豆にかつお節や乾燥野菜、ニンニクをまぶすなど当時としては斬新な味付けにも挑んだ。カシューナッツをしょうゆ味のもち粉で包んだ人気商品「まがりナッツ」は、そういった創意工夫の中から誕生した。
 閉店を知った客から花や手紙が届く。隆行さんは「誰かに引き継げばとお客さんからは言われるが、見ただけでできるものではない。静かに閉じたい」と語る。和美さんは「いただいておいしかったからと、お客さんが増えていき、うれしかった」と感謝している。