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2025年

2025.7.3 みすず野

2025/07/03
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 独文学者の髙橋義孝(1913~95)は「わが家の庭」と題した随筆を「陋宅の庭は女奴天庭という。女奴は猫の異称である。天庭はひたいである。すなわち猫のひたいほどの小さな庭という意味である」と書き出す(『日本の名随筆・庭』作品社)◆家の前の持ち主が、狭い庭を庭らしくしようとして「ごてごてと飾り立てて、いろいろな樹木を植込んだ」のが現在の形。それでも「日本風の庭は何とのびやかで、しかも厳粛であろうか。そして一切の自然的なものは、のびやかで、しかも同時に厳粛である。日本風の庭は第二の自然なのである」と◆気まぐれに2本の枝を挿し木にした柳が、10年もたたないうちに隣家の屋根を越え、枝葉が窓を覆うようになって「何とかして」と言われてしまった。慌てて庭師にお願いした◆飾り立てたことはないけれど、どこからか生えてきた木々が庭を覆い、猫の額を埋め尽くす勢い。ついでに手を入れてもらうことにした。第二の自然どころか、自然そのものに帰っていきそうな庭に職人のはさみが入る。のびやかに放置し過ぎた木々を、思い切って小さくする。これで「厳粛」に近づくだろうか。

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