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2025年

2025.6.30 みすず野

2025/06/30
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 松本市街地を流れる大門沢川で撮影した蛍の写真が、先日の紙面に載った。家の周囲で蛍を見なくなって10年ほどになる。小さな川周辺で1匹、2匹と飛んでいたが環境の変化だろうか◆蛍研究家の南喜市郎(1896~1971)は、卒業式で歌われる「蛍の光」のようにその光で勉強することが可能か実験したと仏文学者の奥本大三郎さんはいう(『虫の文学誌』小学館)。それによると、新聞を読むためには両側に1000匹ずつ必要だったそうだ◆今これだけの蛍を集めるとなると、乱獲だと大騒ぎになるだろう。古い時代の中国はどうだったか。南部にはタイワンマドボタルという光りの強い大きな蛍が分布。中国の書物は漢字の文字が大きいので「20匹も集めれば、なんとか字が読めたのではないかと思われる」と◆蛍が人の心を引き付けたのは「昔々、夜は今よりも暗かった、ということを忘れてはならない」と指摘する。あんどんの類いしかない時代の人々には「ぬばたまの闇夜にぽーっ、ぽーっと光って飛ぶホタルの灯は、いかに好もしいものであったことか」と説く。夜がはるかに明るい今でも、青白い光は人を引き付ける。

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