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「半農半X」塩尻で実践 ワイン用ブドウ栽培 東京の広瀬尚克さん

東京と塩尻を行き来してブドウ栽培に取り組む広瀬さん

 東京都で英国系金融機関職員として働く広瀬尚克さん(52)が、週の半分は塩尻市に滞在してワイン用ブドウの栽培に取り組んでいる。農業ともう一つのやりがいを両立させる注目のライフスタイル「半農半X」を、地元農家らの協力を得て実践している。

 水曜日か木曜日の夜、勤務先の日本橋から東京駅や新宿駅へ行き、特急あずさで塩尻へ向かう。市内のアパートに滞在してリモートワークをしながら、広丘郷原で借りた約30アールの畑でメルローの栽培に励む。日曜日の夜に東京に戻るというサイクルだ。「農業は思った以上にやることが多くて忙しい」と話しつつ、「今までのフィールド(仕事)とは違う面白さがある」と充実した表情を見せる。
 横浜市出身。4年制大学の経営学部を卒業後、英国の大学院で経営学修士号(MBA)を取得。米国系金融機関勤務を経て、平成14(2002)年から現在勤めている英国系金融機関の日本支社で働く。財務データの分析や方向性の提案に関わる仕事を続けてきた。
 金融の仕事は大好きだが、目に見えない「金利」を扱う業種で働く中で「形あるものを自分なりに作ってみたい」との思いがあった。「消費するばかり」の東京での生活から「生産者」へのあこがれもあり、昔から仕事の懇親会などで親しんでいたワインに関わる道を模索するようになった。
 他県の農業大学校の週末コースで生食用ブドウの栽培を学び、令和4~5年、塩尻市が開設する塩尻ワイン大学アンバサダー養成コースを受講。同大学で地元農家とのつながりを得、昨年11月から畑を借りて2拠点生活をしている。今年秋には収穫したブドウをワイナリーに出荷する。
 新型コロナウイルス禍を経て、農業への多様な関わり方が注目されるようになった一方、自身のように2拠点生活で半農半Xに取り組むケースは「成功例は多くはない」とする。「前例になれたらと思うが、まずは周りの畑に病害を広めないことなどを心掛け、足元を固めていきたい」と実直に語る。

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