連載・特集

2024.3.9 みすず野

 卒業シーズンだ。この時期、夕暮れ時の学校から帰宅の途に就く小学生や中学生を見かけると、不思議なことに、その時代の自分の姿が投影される。いいことばかりではない。ほろ苦い思い出も呼び起こされる。センチメンタルに、いろいろなことが胸中を去来する◆それは、母校の近くを通りがかった時に限定される。もう40年以上前のことなのに。田畑だったところに住宅が立ち並び、通学路周辺の景観は随分と変わっているのに。自分の姿がまぶたの裏に鮮明に現れる。母校の力がなせる業なのか◆過日の松本市文書館講座で、松本市内の小学校は150年ほど前に比べると、合併や統合で半分以下になったと説明があった。なくなった中には、明治初期のことだから仕方ないところもあるが、痕跡や記録すら残っていない学校もあるとのことだった。もし、自分の母校だったらと思うとあまりに切ない◆さらなる少子化で学校の統廃合はこれからもいや応なしに進む可能性がある。利己的になりがちだが、母校が残ってほしい気持ちは強弱はあれど誰もが一緒だろう。時代の動向は時に残酷だが、その中でベストな方策を見つけたい。