連載・特集

2024.3.16 みすず野

 登山靴からハイヒールまで-。多様な人たちを受け入れ、楽しませている上高地。現在の1代前の釜トンネルを抜けて、カーブを曲がり、大正池を眼前にした景観を初めて見たときの感動は今も忘れられない。そんな松本市、いや、日本が誇る景勝地を包括し、山を愛する人々に親しまれているのが中部山岳国立公園だ◆長野をはじめ4県にまたがる北アルプス山域を範囲とする。県内では、松本、安曇野、大町の3市と北安曇郡小谷村、白馬村が関係している。乗鞍岳や穂高連峰、槍ケ岳といった3000メートル級の山々がそびえ、湿性の高山植物が多い特徴を持つ。広さ17万4323ヘクタールは、東京ドームの3万7284倍以上だ◆日本初の国立公園誕生が90年前の昭和9(1934)年のきょう。瀬戸内海、雲仙、霧島の3カ所が法に基づいて指定された。中部山岳国立公園は、それから約9カ月後の同年12月4日に指定を受けた◆災いを転じて福となす-。大正4(1915)年に焼岳が大噴火して噴出した泥流が梓川をせき止め、大正池を生んだ。ただ、万事塞翁が馬-。焼岳がそんな活火山である認識は持ち続けて、災害の予防に努めたい。