連載・特集

2024.3.10 みすず野

 松本市中央図書館入り口近くに4本の柱を主にしたモニュメントがある。けっこうな大きさだが、周囲の風景に溶け込み、普段存在に気付かない人もいるかもしれない。松本市長選の告示を迎え、ちょっと気に留めてほしい。「普選実現運動発祥の地記念像」だからだ◆普通選挙(普選)運動が、全国に先駆けて松本で始まったことを知ってもらおうと建てられた。国税を一定以上納める男性に限られていた選挙権を、20歳以上の男性全員が持てるように山形村出身の中村太八郎や松本の天白町出身の木下尚江が立ち上がった。彼らが松本の緑町に普通選挙期成同盟会の看板を掲げ、「普通選挙を請願するの趣意」を発表したのが明治30(1897)7月。東京の普通選挙期成同盟会創立は松本より2年以上後の32年10月だ◆投票したくても経済的な理由でできない時代があった。今は太八郎や尚江らの運動を経て、18歳以上であれば誰もが意中の人に一票が投じられる◆普選実現運動発祥の地記念像のある市の首長を決める選挙の投票率が、低いのもどんなものだろう。一人一人がそんな意識を持って投票所へ足を運んでもらえればと思う。